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Ep.3 アメリア・フォン・ブライトン伯爵令嬢

作者: シエル
last update publish date: 2026-06-16 07:02:18

アメリア・フォン・ブライトン伯爵令嬢────それが、今の私の名前。

私のお父様はブライトン伯爵家の婿で、ある日お忍びで来ていた下町の酒場で平民のお母様と出会った。

お母様に一目惚れしたお父様は『奥様』の目を盗んで度々会いに来て、そして二人は愛し合って私が生まれたの。

お母様は『愛人』だったけれど、三年ほど前に正妻でブライトン女伯爵だった『奥様』が病で亡くなったことで私たちの運命が変わったわ。

この国では女でも爵位を継承することが出来るけれど、家門の血筋の者以外が継ぐことは『お家乗っ取り』に当たる。

だから婿入りしたお父様がブライトン伯爵位を継承することは許されない……。

お父様と『奥様』との間には子どもがいなくて、数年前に分家筋から私より二つ年上のお義兄様を次期当主として養子に迎えていたの。

『奥様』の血筋じゃないから女伯爵にはなれなくても、私の容姿なら『高位貴族へ嫁げるかもしれない!』と考えたお父様はお母様と再婚した。

当然分家の親類たちは反対したみたいだけれど、それを押し切って私たちは『後妻』と『伯爵令嬢』になれた!

これまでもお父様の援助で普通の平民よりは良い生活をしていたし、それなりに教育も受けていたわ。

けれども本格的に貴族として生きていくには、まだまだ足りないと言われてしまった。

リヒテンシュタイン帝国の貴族子女は十五歳から貴族学院へ入学しないといけない、と義務付けられてるそう。

その為に貴族としての最低限の礼儀作法や教養を身に付けさせられ、特例で一年遅く『途中入学』することが出来たわ。

平民の時には必要のなかった礼儀作法や、教養の勉強は厳しくて大変だったけれど、今まで身に纏うことも出来なかったドレスや宝飾類、そして華やかな貴族としての生活に胸が高鳴った。

無事に入学すると二年生のAクラスだった。

Aクラスは基本的には、それなりに学力が高くて伯爵家以上の人が多い。

せっかく平民から貴族となったのだから、どうせなら素敵な人たちに囲まれたい……そんな思いで真面目に勉強を続けたわ。

その甲斐あって、三年生になったときには最高ランクのSクラスに入ることが出来たの!

Sクラスには今まで遠くから眺めるだけだった高位貴族の人たちがたくさんいて、最初はとても緊張したわ。

成績は悪くなかった反面、礼儀作法は付け焼き刃で下位貴族と変わらないような状態だったけれど、気軽に話しかけてくれる高位貴族の人もいて、ちょっとほっとした。

それでもたまに他の令嬢たちに囲まれて「婚約者でもない子息との距離感が近いですわ」と、眉を顰めながら注意されたこともあったけれど、いつも誰かが庇ってくれた。

男の方だけじゃなくて、令嬢たちも……。

私って意外と人に好かれやすいのかも、なんてちょっと嬉しくなったりして。

その中でも特に、カスティエール公爵家の嫡男であるダリウス様は高位貴族なのに気さくに声をかけてくれて、優しく接してくれた……単純な私はすぐに————恋に落ちた。

ダリウス様にはマルガレーテ様という婚約者がいるのは知っていたけれど、どうしても諦められなくて……。

それにダリウス様自身が「マルガレーテよりもアメリアが婚約者なら……」と言ってくれたから、その言葉に期待が膨らみ、どんどん離れがたくなっていった。

けれど夜会などに出席するときは、ダリウス様は婚約者のマルガレーテ様をエスコートしなければならない……。

だから、一緒に入場することは夢のまた夢だった。

二人が並んで入場する姿を見るのは胸がすごく痛む……けれど会場に入ればすぐに私のもとにやって来て、それからはずっと傍にいてくれる。

初めの頃はそれだけでも嬉しかったけれど、だんだんと欲が出てきてしまう……。

私たちの様子を見て、中には怪訝そうな顔でヒソヒソと囁いている人たちもいるけれど、『政略結婚で引き裂かれた恋人たち』の恋物語を見ているようだと好意的に接してくれる人も多いわ。

大勢の人たちからそんな風に応援されていると、本当にマルガレーテ様が悪者に見えてきたの。

それに以前ダリウス様が言っていたわ。

マルガレーテ様とはお家同士の政略的な婚約で、貴族としての『義務』だから仕方がないと思っていたけれど、私と出会って親に言われて結婚しなければならないことに耐えられなくなってきたって……。

確かにマルガレーテ様はお綺麗な方だけれど、何だか冷たく見えるもの。

「ダリウス様……」

「大丈夫だ。私にはアメリアだけだ……」

そう言って抱き締められる度に、幸せで胸が温かくなる。

いつかマルガレーテ様と婚約を解消して、私を妻にしたいとも言ってくれた。

きっと、マルガレーテ様は私を恨むだろう……。

でも、私はダリウス様との未来を諦めることは出来ない。

今はまだ目立たないようにしなければならないけれど……いつか必ず、二人で明るい未来を歩めると信じて、私は今日も学院に向かう。

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